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うつ病、精神療法で治す 「認知行動療法」、思考や行動をプラスに修正

うつ病、精神療法で治す 「認知行動療法」、思考や行動をプラスに修正

抑うつ症状や不安感に苦しむ人の心を軽くする「認知行動療法」という精神療法が注目されている。考え方の癖を直し、症状につながる行動の仕方を変える治療法で、薬と同じぐらいの効果があるという。併用するとより高い効果を示すデータが多い。病気の再発率も低いとされ、国も治療者の人材育成を始める。

面接数十分、10~20回

 大手企業に勤める30代男性は、ある日突然、会社に行けなくなった。常に連絡を取りたがり、即時対応を求める上司と、何を言っても反対する部下との板挟みで働くうちに抑うつ状態になり、抗うつ薬を飲み始めた。2年たっても治らず原田メンタルクリニック(東京都)を訪れた。
 原田誠一院長は、薬物療法と同時に、認知行動療法を試みた。男性は治療を始めた当初、「同僚の期待に沿えない駄目な人間だ」と自分を責めることが多く、「今後も職務は全うできないだろう」と悲観的な見方をしていた。
 治療では、「上司や部下の態度は社会人として適切か」「本当にもう職場でやっていけないのか」などを検討した。治療を重ねるうちに、「上司らの態度は一般社会では敬遠される」「常識的な考えの同僚を味方にすれば、違う対応ができるかもしれない」と考えられるようになり、数カ月後には復職した。
 同クリニックでは1日約50人の患者を診ており、うち約4割が、院長や臨床心理士による認知行動療法を受ける。うつ病や不安障害、統合失調症の患者が多く、「本人の希望とやる気を見て、治療の対象を決める」と原田院長。
 ある出来事に対する人間の反応は、「気持ち」「体」「考え(認知)」「行動」の四つに出る。認知行動療法は、ある程度、頭でコントロールできる「認知」や「行動」を修正し、気持ちや体への影響をプラスに変えることを目指している。
 治療では「何が出来るようになりたいか」目標を決め、目標を達成するための技術を学ぶ。例えば「~すべきだ」という強いプレッシャーや「白か黒か」という極端な考え方を見直す「思いこみ修正法」、ゆっくり深く呼吸し、不安感を軽減する「リラックス法」などがある。
 日常生活でも行動記録をつけるなど「宿題」の実践が必要で、患者も積極的に治療に参加することが求められる。数十分の面接を10~20回程度実施するのが一般的だ。
 名古屋市立大病院では、社会不安障害とパニック障害の患者を対象に、3人1組で治療を行う集団認知行動療法を実施している。治療は1回2時間で週1回、10~16回ほど続ける。これまでに計約300人が治療を受け、社会不安障害では約6割、パニック障害では約8割が改善した。
 精神科の古川壽亮教授は、集団療法の長所として、他人の症状を聞くことで学べる、ロールプレーなどを通じて仲間の評価を聞ける、などを挙げる。一方で、個人の細かい症状まで踏み込めないことがある点を短所に挙げる。

厚労省、治療院育成へ

 認知行動療法はうつ病のほか、不安障害(社会不安障害、パニック障害、強迫性障害など)、統合失調症などの患者に効果があることが、欧米の研究で実証されている。
 うつ病の場合、認知行動療法と薬物療法はほぼ同じ効果があり、認知行動療法の第一人者とされる大野裕・慶応義塾大保健管理センター教授によると、複数の研究で、併用するとさらに効果が高まる結果が出ている=グラフ。
 さらに、認知行動療法は症状を改善させるための技術をいったん身につけるため再発率が低く、薬のような副作用もない。英国では軽いうつ病の場合、薬は処方せず、認知行動療法が推奨されている。
 だがある大学教授は「日本で認知行動療法を専門的に行える精神科医や臨床心理士は数百人もいない」と指摘する。公的医療保険で認められていないことが、治療法が広がらない最大の原因だ。
 医師の場合、30分以上精神療法を行っても、診療報酬は3600円(患者負担はこの3割)。集団での療法も患者1人当たり2700円(同)で、採算に合わないと二の足を踏む例が多い。また、国家資格ではない臨床心理士が行う療法は、患者が全額負担する自由診療となる。
 洗足ストレスコーピング・サポートオフィス(東京都)では、16人の臨床心理士が週60人に認知行動療法を提供。医療機関に長期間通っても治らない人が多く、ほとんどが医師の紹介だ。面接は1回50分1万円で半年待ちという。
 所長で臨床心理士の伊藤絵美さんは「国家資格にして医療行為として認めないと、この療法を必要とする患者に届かない」と訴える。
 原田メンタルクリニックでは混合診療を避けるため、約20分間の療法を臨床心理士が無料で提供している。
 慶応大の大野教授は、認知行動療法に診療報酬をつけるよう、学会を通じて求めている。日本における有効性を示すため、厚生労働省の科学研究費で研究を続けており、標準的な治療法のマニュアル作りも手がけている。
 厚労省も来年度から、国立精神・神経センターで認知行動療法が行える専門家の育成を始める。大野教授は「認知行動を受けたいと思ってインターネットで検索しても、治療者の技術は玉石混交。系統的に療法を学べる場が必要だ」と指摘する。

 ■自分で学べる認知行動療法の本
 ・もういちど自分らしさに出会うための10日間(星和書店、2625円)
 ・自信をもてないあなたへ――自分でできる認知行動療法(阪急コミュニケーションズ、1890円)
 ・こころが晴れるノート――うつと不安の認知療法自習帳(創元社、1260円)



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